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 俺は今日、悪魔を召喚する。  俺は漫画家だ。売れていなくても漫画家だ。デビューしてから4年目でやっと掴んだ連載が半年も経たずに打ち切られた。仕事がなくなった。  エゴサをしても、初期の頃は『つまらない』と叩かれ、打ち切られる直前は話題にすらされなかった。単行本も売れなかった。  もうどうでもいいわ、と何もせずに堕落した生活を送っていた。全てを諦めた時、資料として買った『悪魔召喚』という本が目についた。  パラパラとめくり【願いを叶えてくれる悪魔】のページで手を止める。3つの願いを叶えてくれるが、代償に自分の人生を捧げなければならないと書いてある。夢も希望も無くなった俺にとって、とても魅力的に見える文章だった。  人生を捧げるとは、悪魔に殺されるって事だろうか? 今まで散々な人生を歩んできた。漫画を描く以外、俺には何もない。その漫画も誰にも求められていなかった。それなら最期に悪魔に願いを叶えてもらっていい思いをしたい。それで人生の幕を閉じよう。  願い事は何にしようか、と考えながら儀式に必要なものを揃える。スーパーやドラッグストアで買えるような物ばかりで、本当に悪魔を召喚できるのか、と一抹の不安を覚える。  魔法陣はかなり複雑だが、模写には自信がある。コピーすれば手っ取り早いだろうが、できるだけ手をかけたい。  儀式に必要な物は全て揃った。と、言いたいところだが、どうしても1つ手に入れる事ができなかった。それは美女の血。  生まれて24年、女性に縁の無かった俺が、そんなもの手に入れられるわけがない。仮に女性の知り合いがいても、血をください、なんて言えるわけもない。それに美女の定義って何だ? 人によって違うだろ。俺にとって美女でも悪魔にとっては違うかもしれない。  だから美女でも、まして女でもない平凡な俺の血で我慢してもらうしかない。少しでもマシに見えるように髭を剃り、もっさりした髪を美容室で整えた。自分にどんな髪型が似合うか分からないから、美容師におまかせした。多少は見れるようになっただろう。  よし、儀式を始めよう。両頬を叩いて気合を入れた。  魔法陣の周りに用意した物を順番に並べる。呪文を唱えて親指をナイフで傷つけ、滲んだ血を魔法陣の真ん中に垂らした。  なんの反応もなく、こんな簡単に悪魔を召喚できるわけないか、と息を吐き出した時、目を開けていられないほどの光に包まれる。
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