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「はい、これホットココア。......大丈夫?」
「う、うん」
次の日、雨。
デート中に通り雨に遭った私達は一人暮らしの彼のアパートの一室に避難していた。濡れてしまった私のカーディガンを手際よく浴室乾燥にかける彼はやっぱり気が利いている。
それに、私の緩く内巻きウェーブにしていた髪が雨でヘタついてしまったのを彼がドライヤーで乾かしてくれた。確かにこんなこと、同じ研究室の猿山くんとかは出来そうにない。
ーー元カノの“教育”のおかげでしょ?
ミキの言葉が頭の中をクルクルする。昨日はあんまり眠れなかった。不安になって彼の研究室に会いに行ったら快く受け入れてくれて、そのままデートをしてくれた。こんなに優しい彼が、私以外の女の子によって丹精込めて作られたものだったとしたら......。なんだか、複雑な気持ちになる。
(なんだろう、この感じ)
これじゃあ面倒くさい女だ。
私は気持ちを切り替えるために飲み物に集中した。
「ホットココア、おいしい」
「良かった。俺、ココアあんまり好きじゃなかったんだけど、飲んでるうちにハマって来てさ」
「へ、へぇー、そうなんだ」
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