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お花見のシーズンの怖いところは、酔っ払いが白昼堂々歩き回っているところだ。背の高い中肉中背のスーツを着たお兄さんは社会人二、三年目といったところだろう。若いけれど新卒ではない、そんな感じの人だった。
「あの......」
「やぁ、俺は拓土! 気軽に拓土さんって呼んでくれ」
遠慮なく隣に座ってきてビール缶を飲んでいるのはどう見てもヤバい人である。
(何かされたら嫌だな。怖いな)
逃げたいけれど、逃げることで下手に刺激をするのも恐ろしい。優しそうに見えるけれど、酔っ払って絡んでくる時点で変な人であることには変わりがないのだから。
(健斗くん、助けて)
しかし彼の次の一言で私は対応を変えることにした。
「失恋したんだ! 誰でも良いから話を聞いて欲しい! でも、知ってる人に聞かれるのは嫌だー!」
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