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「元カノによりを戻してもらえなくて1年、ついに着拒ですか」
「そうなんだよ。俺、本気なのに。一日に一回は連絡したってのにさ」
(まぁ、あの。鬱陶しかったんだろうな)
十分程度の会話でわかる。この人は多分、面倒くさい。涙でブランドモノの時計をビショビショにしそうだったから、慌ててハンカチを貸してあげた。きっと、彼ならそうしたから。
「仕事、ほっぽってきちゃったよぉ。俺、営業マンなのに」
「は、はぁ」
「前の彼女に”元カノが人生に食い込んでてヤダ”って言われるくらい元カノのことが忘れられなくて! でも、元カノは俺のこともう全然好きじゃないんだよぉ」
元カノ。この人もまた元カノ問題に悩まされているのだ。
(聞いてみたい)
「あの、男の人にとって、元カノってどういう存在なんでしょうか?」
一般的にどうかは知らんけどさ、と拓土さんは断ってこう話した。
「俺にとっては人生の通過点の戦友。受験期から大学デビューまで精神的な支えになってくれたんだよぉ。もう大人になるまでの”俺”を形作ってるじゃん? それなのに捨てるとか。捨てるとかぁ」
(なるほど)
思春期の時期に支えてくれた相手に代え難い大きな感情を抱くこと、それは私にもわかる感情だ。行動の節々に余韻が残るほどの関係。そこまでの深さの関係に私はまだ誰ともなったことがない。
「恋愛は真摯に向き合えば向き合うほど、離れたときの傷が深くなるだろぉ。俺は傷がまだ塞がらないんだ」
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