III

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 振り返るとこれまた酔っ払っているのか、おじいさんが立っていた。 「話は聞かせてもらったわい。お主ら、青春をしておるのぉ」 「青春じゃないよぉ〜。お先真っ暗だよぉ〜」  拓土さんの酔い具合は進んでいるみたいだ。お爺さんは孫をあやすみたいに拓土さんの頭を撫でると拓土さんは幼児みたいに泣いていた。 「変な人」 「ほっほ。お嬢さんは変な人といいつつ真面目に話を聞いてやっていたじゃあないか」 「桜がーー。一緒にお花見をしたからかもしれません。普段だったら知らない人となんてお話ししないのに」  この桜の雰囲気が、春の陽気が、きっと私を寂しいだけではいさせてくれなかったのだと思う。  お爺さんはニッコリと笑うと小袋を渡してきた。 「ほれ、これは幸せの小袋じゃ。幸せになりたいときに撒くといい」 「えっ?」
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