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唯美ちゃんと丸男君のその角は牛の角のようにとても固かった。それに引っ張っても頭から抜けなかった。
「抜けないし固いよ! 何かトリックがあるんだよね?」
わたしは二人が首を縦に振ってくれますようにと祈った。けれど……。
「本物だから固いし抜けないんだよ」
「そうだよ、本物だもん、トリックなんかないよ」
ああ、首を縦に振ってはくれなかった。まさか、本当に目の前いるこの二人は鬼だと言うのかな。
そこまで考えたところでわたしは自分の言葉にハッと驚いた。だって、わたしは目の前にいるこの幼稚園児くらいに見える子供を鬼だと思ってしまったのだから。
「そんな本物だなんて信じられないよ」
「信じられないって言われても本物だもんね」
「うん、本物だもん」
唯美ちゃんと丸男君はわたしの顔を見てニヤリと笑った。
「そ、そんな……」
その時、部屋の引き戸がガラガラと開いた。
そして……。部屋の中から森太郎さんが出てきた。
「丸男に唯美騒がしいぞ。何を騒いでいるんだよ」
森太郎さんは唯美ちゃんと丸男君に視線を向けて言った。それからわたしの存在に気づいた様子で視線がこちらに向いた。
その森太郎さんの目は今日も青味がかった色をしていて妖しげだった。
それと、森太郎さんの頭にも角がニョキニョキと二本生えていた。
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