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「え! 角ってこれのこと?」
お母さんは頭からニョキニョキと生えている角を指差しながら言った。
「うん、まさかお母さんも鬼だったの?」
わたしは、自分の言っていることが馬鹿げているとは思うけれど、この目で実際に鬼を見てきたし、それにお母さんの頭からニョキニョキと角が生えているのだ。
「あら、これ本物に見えるかしら?」
「本物じゃないの?」
「あはは、わたし演劇の練習をしていたのよ」
お母さんは笑いながらテーブルに置かれている『鬼とあやかし』と書かれた冊子に視線を向けた。
「演劇?」
「そうよ、わたし舞台女優を目指しているんですもんね」
お母さんは得意げに胸を張る。
「舞台女優ってまさか今から目指すの?」
「そうよ、夢を追いかけるのに年なんて関係ないわよ」
「はぁ、そうなんだね……」
わたしはあまりのことに驚きを隠せない。鬼の森太郎さん達と出会ったのと同じくらいびっくりした。
「これが台本よ」
お母さんはテーブルの前までやって来て『鬼とあやかし』と書かれた冊子をわたしに見せた。
「それ、台本だったんだ」
「ええ、そうよ」
近くで見るお母さんの角はニョキニョキと頭から生えているように見えた。
「お母さん頑張ってね」
「真里花ちゃんありがとう頑張るわよ」
生き生きとした笑顔を浮かべるお母さんのことがちょっぴり羨ましく感じる。
「ねえ、お母さんもう一つ聞いていいかな?」
「いいわよ。どうぞ~」
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