オタクと陰キャのプチ物語

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「え?渡辺くん、ダブったの?」  帰り道、二人共自転車通学だったので、押しながら歩いていた。 「出席日数が足りなくて。二年に上がる時はギリギリで進級出来たんだが、今回は無理だった」 「……なんで?……まさか」  イジメ?オタクだから? と、一瞬邦太郎の頭をよぎった。  だが、オタクだからイジメとか偏見だろうと思いなおした。  「深夜のアニメを観まくっていたら起きれなくて結局休んじゃう。なんでアニメは深夜が多いのだろう」 「え?アニメ?」 「ああ。それと、朝起きれなくて。どうして学校は朝起きて行かなければならないんだろう。……午後一時からだったらいいのに」 「……?」  こいつは馬鹿だ。と邦太郎は思った。そしてイラッとした。家計のためにバイトをしている自分が馬鹿みたいだ。アニメで留年。しかも学校が午後一時からだったらいいのにと抜かしてる。ぬるい発言をした一郎に若干腹が立った。 「僕、こんなだからずっと友達出来なくて。まあ、ラノベがあったから気にならなかったけど。でも嬉しいなぁ、初めて友達が出来たよ。後崎氏が友達になってくれて良かった」 「そうなのか?」 「うん。僕、背が高くて眼鏡で暗いから、皆ドン引きしちゃって。後崎氏は普通に喋ってくれて嬉しい」  並んで自転車を押していても二人の背の高さの違いは一目で分かる。一郎は一八八センチはありそうだ。邦太郎は一七二センチくらい。  邦太郎は一郎を隣から見上げた。友達が出来たのは邦太郎も小学生以来だ。一郎に嬉しいと言われ、少しこそばゆい気持ちになった。 「俺も……友達が出来て嬉しい」  ボソッと呟いた。 「本当に?じゃあ、僕たちズッ友でいようね」 「は?ズッ友?」  いつの間にか腹立たしい気持ちは霧散され、邦太郎が顔を真っ赤にして聞き返した。
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