オタクと陰キャのプチ物語

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 一度だけ中学の時に友達をボロアパートに招いたことがあった。その時友達は何も言わなかったが、翌日学校に行ったら、友達がクラスの皆に邦太郎のボロアパートの話を揶揄うように大きな声で話していた。周りの者も蔑むように嗤い邦太郎をネタにして馬鹿にしていた。その姿を見た瞬間、邦太郎の中で何かが崩れてしまった。  借金の連帯保証人になった父親を責め立てたこともある。父親は優しい人間だ。親友に騙されたのは人の良さに付け込まれたからだ。それは邦太郎もよく分かっていた。責め立てたこともあったが邦太郎は父親を嫌いにはなれなかった。それに母親も妹も出て行き身内は父親しかいない。親子二人で頑張ろうと思っていた矢先にクラスメイトの嘲笑。その日から、邦太郎は人付き合いを一切辞めた。イジメにはあわなかったが、周りも邦太郎に関わることがなかった。高校生になっても友達を作る気が全く無かった。一郎に出会うまでは――――。 「いや、やっぱり家には来ないで欲しい」    もし、中学の時の同級生みたいに一郎が馬鹿にしたら、軽蔑されてしまったら耐えられない。もう、一生他人と接することが出来なくなるだろう。邦太郎は、はっきりと断った。 「え?……後崎氏、僕に来てほしくないの」 「…そうじゃなくて……ウチ……古いアパートだから」 「古い?アパート?本当?見てみたい」 「は?」 「うん。な~んだ、そんなこと気にするなんて。アパートだろうがなんだろうが、どんなに広かろうと狭かろうと関係ないよ。僕、友達の家に行ったことがないから嬉しいんだよ。ボロくても気にしないよ」 「渡辺君……」  ボロくてもの下りが多少気になったが、邦太郎は少し嬉しかった。
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