オタクと陰キャのプチ物語

1/16
前へ
/16ページ
次へ
  「昨日、観にいったよ、映画」 「私も彼氏と観に行った!めちゃくちゃ良かったね~」  授業の合間の休み時間。クラスの女子が大きい声で騒いでた。聞き耳を立てるわけでもなく自然に聞こえてくる。近くの席に座っている後崎邦太郎の耳にも、当然ながら飛び込んできた。  女子が話している内容は、今人気がある俳優の話題だ。老若男女問わず……は言い過ぎだが、若い世代では知らぬ者はいない。椎谷灯也(しいやとうや) 。今から約二年前、渋谷辺りを歩いている時にスカウトされて、即デビュー。若干事務所のゴリ押しもあってドラマではいきなりの準主役、演技力もずば抜けていて主役を食うほどだった。身長も高くてイケメンで人間性も大変よい。どこぞのテレビ局の偉い人がSNSでべた褒めしていた。今では出演する作品は主役ばかりだ。  なにが言いたいかというと、芸能人に疎い後崎邦太郎(ごさきくにたろう)でも、推谷灯也を知っているということだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加