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お! 今日もインプレッション(表示回数)増えてんじゃん。そろそろバズるか? なんてな。
昼休憩時に俺、室木啓介がまずすること、それはSNSの投稿がどれだけ見てもらえたかのチェックだ。
フォロワーも増えたしモチベーションあがるなー。くふふ。
「むーろき! おまえが社食にいるの、久しぶりじゃん? なにスマホ見てにやけてんだよ? あ、マッチングアプリ?」
「ち、違! 会社でそんなことするわけないだろ」
「別に26歳独身で引きこもりがちなおまえには、出会いのきっかけとしてアプリに手を出すのもいいと思うけどな」
「……しないって」
「こら、和久井くん。からかわないの。ごめんね、室木くん」
「あ……北瀬さん」
「あれ? 室木くん、前髪長すぎない? 元はいいんだから、もう少し見た目に気を遣ったら?」
営業の和久井と営業アシスタントの北瀬さんが声をかけてきた。
二人は俺の同期。俺だけ別の部署で、社内ではたまに会うくらいだが、陰キャの俺にこうやって声をかけてくれる貴重な同僚だ。
俺は北瀬さんに指摘された前髪を見ながら指でつまんでみた。
「そんなに長い? このくらい普通じゃ――」
「まあ室木くんは人前に出る仕事じゃないからそこまで外見に気を配らなくてもいいのかもしれないけど……私はもう少し短い方が好み、かな」
「え……?」
俺が北瀬さんを見ると、彼女と目が合った。北瀬さんは恥ずかしそうに微笑み、耳に髪をかけた。
「おーいおい! 社食でラブストーリー始まっちゃう感じ?」
「ちょ! 和久井くん、からかわないで! もう! ねー? 室木くん」
「あ、う、うん」
予想もしなかったシチュエーションにうろたえた俺は、白飯を口にかき込んだ。
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