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慣れた手つきで窓の鍵を開ける。
「おかえり、エイプリル」
青い小鳥がパタパタと部屋に入ってきた。小鳥は針金でできたスカスカの鳥かごにするりと入り、とまり木にとまった。
去年の4月、会社からの帰り道、どこから飛んできたのか俺の肩に乗ってきたのがきっかけで飼うようになった。4月に出会ったから名前はエイプリル。飼うといっても、俺が仕事にいっている間は外に放していて、俺が帰ってきたらさっきのように部屋に戻ってくる。以前は小鳥用の餌を準備していたが、まったく食べようとしないので諦めた。おそらく、外で自由気ままに虫でも食べているんだろう。
エイプリルが美しい声でさえずり始めた。
ああこれこれ。俺の創作には、このBGMがないと。
CGアーティストKの構想は、エイプリルと出会う前から頭の中にあったが、思うような作品が作れなくて悩んでいた。ところが、エイプリルの声を聞くと、不思議と思った通りのCG画像を作れるようになった。エイプリルは俺の幸せの青い鳥なんだ。
一番最初の作品を5月1日に公開した。それ以来、毎月1日に新作をアップするようにしている。誤算だったのはエイプリルフールが4月1日だということ。エイプリルフールはフェイク画像の大作がわんさか出てくるから、俺の作品が埋もれないようにしたい。バズるような最高の作品を作るんだ。画像がバズったら北瀬さんに俺がCGアーティストKだって打ち明けるのもいいかも。
イメージが、きた、きた、きたー! 俺の妄想が爆発だ!
海底に沈む未確認飛行物体(UFO)というのはどうだろう。本当のニュースのように新聞仕立てにしてみるとか。長年海底に沈んでいたから海藻が絡まっていて、特殊な金属でできているから、機体はさびずにピカピカしている。薄暗い海底だが、UFOの周りには見たこともない発光する生き物がいる幻想的な風景。よし、これで進めよう。いい作品になりそうだ。
俺はエイプリルフールに公開するために、新作に没頭した。
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