1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
記憶の中の小春はいつも笑っていたね。
残された時間が少ないことを自分が一番よくわかっているはずなのに。
白い病室に春の風が流れ込んでくる。
小春の柔らかな髪がさわさわと揺れる。
「花見に行きたいな」
あなたと二人で、あの桜の木の下で、もう一度…。
小春が言葉を切ると、いつもそこで記憶の再生は終わってしまう。
思い出が黒く塗り潰され、目を開けると、そこは病室ではなく私の部屋。
ため息を吐く。
ここのところ、毎日同じ夢を見ている気がする。
小春はもうこの世界にいない人だ。
そんなのわかってるよ、でも…。
最初のコメントを投稿しよう!