15人が本棚に入れています
本棚に追加
ヒデ
さっそくオレたちは堂島署へ向かった。
真っ赤なポルシェだ。
オレの車だが、あまり運転は得意ではない。普段はヒデに運転をしてもらっていた。
助手席に座るマリアはオレの太ももを撫でて意味有りげに微笑んだ。
まるで小悪魔みたいだ。
「フフゥン、この真っ赤なポルシェで彼女を引っ掛けるってワケねえェ?」
マリアはバカにするようにあざ笑った。
「そう言うワケじゃないけど、お祖母様にねえェ……」
「フフゥン、おねだりして買ってもらったのォ。さすがシンゴはスーパーニートねえェ」
「あのなァ、スーパーニートって。一応、出世払いだよ」
このままならお祖母様に申し訳なくて顔向け出来ない。
確かにニートにしては恵まれている。
ビジュアル系弁護士と言っても収入はたかがしれている。恥ずかしい限りだが、もっぱら収入源はお祖母様の顧問弁護士としての契約料だけだ。部屋もタダで使わせて貰っていた。
いわば補助してもらっている身だ。
この歳になるまで一度もバイトや仕事らしきモノをしたことがない。大学生の頃に何人か、家庭教師をやったくらいだ。
そういえば小学生のマリアの家庭教師もやったはずだ。
こんな高級車を乗り回しているニートは滅多にいないだろう。
ポルシェは堂島署へ到着し、さっそくヒデのいる取り調べ室へ通された。
まだ逮捕状は出てないので、比較的面会はスムーズだ。
オレとマリアが取り調べ室へ行くとヒデは立ち上がって歓迎してくれた。
「やあァシンゴ君。待ってたよ。早くオレを助けてくれ。オレが未来を殺すはずないんだからさァ」
真っ赤なモヒカン姿のヒデが泣き叫んだ。
「ゲェッマジかよ。パン君じゃん」
マリアはヒデを見た途端、眉をひそめて『パン君』と呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!