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織田マリア
マリアはヒデをひと目見た途端、『パン君』と呼んだ。
「あのなァ誰がパン君だよ。チンパンジーか。ふざけんなよ。誰だよ。この子は!」
思わず、ヒデもムッとして立ち上がり反論した。
ヒデの前にいるコワモテの男性が鰐口警部補なのだろうか。
「チィッ」小さく舌打ちをしてマリアを睨んだ。
「お黙り。この私こそ天才美少女探偵、織田マリア様よ。頭が高いわ。控えなさい!」
上から目線でマリアは自己紹介をした。
自から天才美少女探偵と言うのはよほど自意識過剰な子としか思えない。
「えェ、何だって。美少女探偵、織田マリだってェ?」
ヒデはムッとして聞き返した。
「はァ、織田マリじゃないわよ。バカなの。マリアよ。信じられなァい。もうパン君は、このまま逮捕して島流しの刑よ。とっとと捕まえなさいよ。そこのおっかない顔した刑事さん!」
マリアはアゴで鰐口警部補を差した。
「はァ……」明らかに鰐口警部補は迷惑そうだ。
「おいおい、ムチャ言うなよ。オレは犯人じゃないって罠にかかったんだ」
ヒデは開き直った。
「ワナに?」
「そうだよ。オレが未来の部屋へ訪ねて行った時、すでに誰かが居たんだよ」
「ン、誰かって、誰よ?」
「あのねェ。それがわかればオレはこんなトコにいないだろう。ひと晩じゅう事情聴取されて」
「ふぅん、なるほど」
もっともな話しだ。
「ッで、彼女の部屋へ行くと、いきなり背後からスタンガンを首筋に押しつけられて失神したんだよ。見てくれよ。これがその時のアザさァ」
ヒデは後ろを向きうなじの辺りを見せた。確かにアザになっている。
「フフゥン、そう、わかったわ。真犯人が」
マリアは自慢げに胸を張って見せた。
「えェ……?」
「真犯人だって」
「おいおい、誰なんだ。そいつは?」
さすがにコワモテの鰐口警部補も眉をひそめ訊いた。
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