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「ねぇ、五月の病院にお見舞いに行く? 彼女からは怒られるかもしれないけど、騙された貴方には、その権利があると思うの……」
彼の表情がパッと明るくなる。
「ありがとう。うん、行きたい。えっと『さつき』さん。もしかして『さつき』って五月って書くの?」
私は口角を上げて大きく頷いた。
「そうよ。五月。だから私達姉妹は漢字で書くと同姓同名に見えるの。父のアィデアなんだって。中学校までは同じ学校だったからよく間違えられたけど、高校からは私は女子高で、五月は貴方と同じ高校だから問題無かったけどね」
今度は彼が大きく頷く。
「でも、二人は本当にそっくりだよな。ニキビに気付かなかったら分かんなかったよ」
「私、いつもは髪型も違うし眼鏡掛けてるから、五月とは雰囲気は大分違うんだ。だから五月に似せるのに苦労したわ。それに貴方と話を合わせなくちゃいけないから、貴方のこと五月から聞いて一生懸命勉強したの。お兄さんの件は失敗しちゃったけど……」
私は軽く舌を出す。
「あーっ、そう言う仕草も似てるから分かんなかったんだ。納得……」
そう言いながら彼は満面の笑みを向けてくれた。
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