29人が本棚に入れています
本棚に追加
本当の五月(メイ)は?
私と拓海くんは、五月が入院している横浜けいゆう病院を訪れていた。
「ねえ、五月さん。五月はもう二週間入院しているんだよね。もう病状は落ち着いているのかな?」
病院のロビーを入って、五階の病室に向かうエレベーターを待ちながら拓海くんが聞いて来た。
「えっと、最初の三日で副腎皮質ステロイドを点滴で投与して、その後は経口投与に切り替えているの。それでケロイド的な発疹はほぼ沈静化したけど、まだその痕が残っているわ。だから五月は拓海くんに顔を見られたくないから……このことは絶対の秘密にしてって釘を刺されてたの」
エレベーターのドアが開き、二人でエレベーターに乗り込み五階に向かう。
エレベーターの中で拓海くんが呟いた。
「……そんなこと関係ないのに。あいつ、俺がどんなに五月のこと大切で大好きなのか分かってないよな」
その彼の言葉に、私もドキドキしてしまう。
ふと気付くと拓海くんが私を見つめている。
「どうしたの? 五月さん? 顔が赤いよ……」
その優しい表情に私の心臓の鼓動が更に高まっている。このままでは私も拓海くんを好きになっちゃいそうだった。
大きく首を左右に振ると、丁度開いたエレベーターのドアを抜けて、足早に五月の病室に向かった
最初のコメントを投稿しよう!