29人が本棚に入れています
本棚に追加
北見五月と書かれた病室の前でドアを叩く。
「はい、どうぞ」五月の声が聴こえる。
ドアを開けると彼女の病室に入った。ベッドの上で本を読んでいた五月が顔を上げた。
「あっ、五月。どうだった? デートは……? えっ? 嘘……」
続いて部屋に入って来た拓海くんを見て五月が目を見開いている。そして両手で顔を覆って下を向いてしまった。
「五月! なんで拓海くんを連れて来たの? 絶対の秘密って言ったのに酷いよ!」
「五月、あのね……」
「五月さん。俺が話すから……」
そう言うと拓海くんは、五月のベッドの横の椅子に座った。まだ五月は両手で顔を覆ったままだ。
「五月。俺が五月さんに言って、連れて来て貰った。俺を騙すなんて酷いじゃないか」
五月は俯いて顔を両手で覆ったままブルンブルンと首を左右に振っている。
「……だって、こんな顔、拓海くんに……見せられないよ」
最初のコメントを投稿しよう!