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拓海くんは大きな溜息を吐くとゆっくり首を左右に振った。そして五月の両手を掴んで顔から外させた。
「五月、こっち向いて」
まだ五月は下を向いたまま大きく首を左右に振っている。
「五月、俺を見て。俺は五月の彼氏だぞ。病気の彼女を心配するのは当たり前だろう。それに病気で顔が荒れたくらいで嫌いになる訳ないだろう。五月のこと大好きなんだから!」
彼の言葉に、五月の身体がビクンと反応した。そしてゆっくり顔を上げ、拓海くんを見つめた。その瞳は涙で潤んでいる。
「良かった。もう大分治ったんだね。きっと残りの発疹の痕も直ぐに治るから。大丈夫……」
「うん」
五月がゆっくり頷く。
「そしたらみなとみらいにデートに行こう。五月さんの代理デートじゃない、本当のデートにね」
五月は大粒の涙を流している。そんな五月を拓海くんはギューッと抱きしめた。
「愛している、五月。早く治るんだぞ」
拓海くんの背中に両手を廻して、五月は大きく何度も頷いていた。
私もその二人の姿を見ながら自分の頬を涙が流れるのを感じていた。
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