久し振り

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久し振り

 高校を卒業して、俺は進学した。  薫は治療に専念し始めて、家から離れた、その方面で有名なクリニックの近くにアパートを借りて、ホルモン治療を受けながらアルバイトを始めた。  もう高校の時の様に頻繁に会う事は出来なくなった。  大学を終えて、俺はなんとかITの会社に就職が決まった。  入社式のある4月1日、会社を歩いていると、どこかで見たような顔の清掃員と出会った。  向こうも俺を見ている?  と、声をかけてきた。 「久しぶり。誕生日おめでとう。今日入社式だよね。就職もおめでとう。元気だった?俺、薫だよ。」 「えっと?薫?すげ。のどぼとけ出てるし。声低くなってる。」 「俺、今清掃員の仕事してんの。まだホルモンの治療の最中なんだ。金は要るからね。この会社は水曜日に来るから、昼休みに時間空いていたら、いつか飯でも食おうぜ。」  薫は身体を大分鍛えているようで、作業着を着ている姿はガッチリしてすっかり男性っぽくなっていた。男性ホルモンのおかげもあってきっと、筋肉がついてきているのだろう。  入社式の4月1日。  高校の時の華奢な身体の薫はもういなかった。  おれは、悩みながらも自分に嘘をつかずに自分を貫き通している薫に感動しながら、一緒に飯を食える日を楽しみに待っている。 【了】
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