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俺のせいで、座頭や一座のみんなに迷惑をかけてしまう。座元や贔屓ゆえ大目にみてくれている寺社奉行のお役人の顔に泥を塗ることにもなる。
喜助は頭を抱えた。
「どうだろう。結末を少し変えてみるというのは。要は心中を遂げなければよいのだろう」
政之進が言った。
「それはだめだ。この芝居は最後に心中を遂げるからこそ成り立つんだ」
喜助は言った。太一も喜助の言葉にはうなずいていた。
「そうだな」
政之進もまた納得し、黙り込んだ。
「……ちくしょう……」
喜助はつぶやいた。くやしかった。やっと、やっと思いが実現しようとしているこんなときに、なんだってこんな邪魔が入るんだ、掌に爪が食い込むほど強くこぶしを握った。
芝居小屋の梁に誰かが下げてくれたのか提灯がひとつ灯っていて、炎のゆらぎが三人の影を頼りなく映し出していた。
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