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「俺は演ってもかまわないんだぜ」
太一はそう言って喜助の肩に手を置いた。
太一のその気持ちがうれしかった。しかし、だからこそどうしていいのか分からなかった。
「少し、考えさせてください」
ふたりは太一と別れ、無言のまま宿へと帰った。
かまうことはない、やってしまえ、という気持ちは喜助にもあった。
たかが祭りに掛けられる小芝居ではないか。お上の目もそこまでは届くまい。
やっと政之進の初舞台が叶うのだ。
観客にあの若君を演ずる政之進を見てもらえる。客はどんなふうに見るだろう。どんな感情をいだくだろう。
それを見たい。
その反応は舞台をどんなふうに彩るだろう。政之進はその中でどんな姿でそこにいるだろう。
あの芝居ふたりでやって絶対。
この芝居をやったら、どっかで評判聞きつけて花吉が見に来てくれるかもしれない、そういう淡い希望もあった。花吉、花吉、やっぱりやっちまっていいだろうか。
しかし、たかが祭りの小芝居、本当にそうだろうか、と喜助は思う。
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