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「だが、どうしてそちがここへ」
そう、どうして美玖利があっちの世からわたしを追ってきてくれたのか。
「はい、冬青様の指示でございます」
「冬青殿が?」
冬青は篠家の次男。最初に会ったあの姿を思い出す。少し意地悪で人をからかうようなことを言う。それでいてその目の奥には優しさがにじみ出ていた。胸の奥がキュンとして痛いよう。どうしてこんな感情になるのだろうか。
「沙羅様は記憶を失われてもわたくしのことをなんとなく感じ取っておられましたね」
嬉しゅうございました、と美玖利がはにかむようにして笑った。
「こちらへ来てからずいぶん、背が伸びましたな」
美玖利は目を細めながら言う。
「なにしろ栄養がいいからな。これはなんじゃと思うくらい胸も大きくなったぞ」
わたしはおどけて、胸に手を当てる。
「ただ、沙羅様が通ってきた空間の亀裂がふさがってしまった様子。それが一時的なものかどうかはわかりかねますが」
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