小児科の中学生・稲原朱里

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 家へ帰って、いつものように母には報告した。いつもなら、「あらあら、またなの、どうしてなのかしらね」で済むのだが、今回は母は青い顔をして病院へ行こうって言い始めた。  なんでも母親たちが集まるお茶会で、集会があるといつも倒れる私のことを言ったら、皆が口をそろえてきちんと診察してもらった方がいいと言われたらしい。ママったらすぐに影響されちゃうんだから。  今までも何度もあったけど、「また貧血? ほうれん草とかレバー食べなきゃ」って言ってただけなのに。  ちょうど、中間テストも終わったから、ちょっとだけ検査入院しようってここへ来た。  窓際って開放感がある。空を眺めていると私の心もリラックス。  それよりも気になったのは、同じ部屋へ移ってきた少女。  肩で髪を切りそろえて目鼻立ちがくっきりしている。もっと髪が長かったら時代劇のお姫様みたい。  年齢は同じくらいに見える。どこの中学って聞いたらきょとんとして私を見た。  それでわかった。この子、あのニュースで騒いでいた人だって。記憶がないって本当だったんだ。この病院にいるってことは知ってたけど、外科から小児科へ移ってきて、それも同じ部屋になるなんて思ってもみなかった。  あの子も気づくと空を見ている。もっといろいろ思い出してくれれば話が弾むのに。
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