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2人の交際は順調で、毎週末どちらかの家で過ごしていた。
悠久は有名理系大学を卒業し、今は一級建築士として働いおり、多忙だった。
普段は紳士的だったが、甘えん坊な一面もあり、頻繁に連絡が来たし、2人で過ごす時にはよく引っ付いてきた。
2人でお互いの誕生日を過ごし、クリスマスを過ごし、年越し、悠久は遠方の実家に帰省した。
年が明けて直ぐに、悠久から電話があった。
「明けましておめでとう。」
電話先の悠久はいつもより上機嫌だ。
「明けましておめでとう。実家は楽しんでる?」
「うん。今日は高校の友達と男3人で飲んでてさ。そのまま初詣に来てる。それでさ、その内の1人が佳乃と話してみたいって言うんだけど、いいかな?」
(釣り合わない相手だと思われたくない。上手くやらなきゃ。)咄嗟に浮き出たそんな感情を恥ずかしく思いながら、「うん」と返事をする。
「佳乃さん?こんにちは!悠久の友人の小室です。こいつ、飲んでる間中、佳乃、佳乃って。惚気ばっかりでもううんざりですよ。」
「おまえっ」電話の遠くの方から悠久の声がする。2人の口調から、悠久と小室の仲の良さが伝わってくる。
「本当ですか?悪口じゃないといいんですけど。」
「悪口なんて全然。次は是非佳乃さんも一緒に来てくださいよ。では!」
会話が終わりホッとする。
そのまま小室は悠久に電話を代わったようだった。
「佳乃?酔っ払いがごめんね。また連絡する!」
悠久は慌てたように電話を切った。
悠久に直接「好き」と言われたことはないが、彼の態度や言動にはその気持ちが溢れている。ただ、未だに私は彼に見合う自信がなく、常に漠然とした不安があった。それでも私は悠久が大好きで尽くしたかったし、この恋に終わりがないことを願った。
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