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桜颪
同棲の提案を受けてから、逡巡していた。
私は結婚がしたかった。
周りの友人知人もこの1年で次々と結婚し、自分自身も人生を共に過ごすパートナーを持ちたいと思い始めていた。
それが悠久だったらどんなに素敵だろう、と。
同居して、その未来に結婚はあるのだろうか。
そんな考えが、尻込みさせていた。
一月ほど悩み、答えを決めた。
GWに同窓会のため帰省した悠久は、お土産を持って私の家に来た。
「このお菓子地元の銘菓で。地元のこと、佳乃にも知って欲しいなって思って。今度は一緒に帰省しない?実家も紹介したいし。」
そこまで考えてくれていたことに、胸が暖かくなる。
「ありがとう。お盆にでも一緒に連れて行ってよ。
それとね、私、悠久と同棲したい。とっても嬉しかったんだけど、返事が遅くなってごめんね。」
悠久の表情が明るくなったのがわかる。悩んでいた間、微妙に流れていた気まずい空気が、さっと澄んだようだった。
「まずは2人で暮らす部屋決めないとな。ベッドも新しいの買った方がいいかな…」
綻び切ったその表情が可愛く愛しかった。
一歩ずつ前に進んで、進んだその先に、きっと幸せが待っていると信じていた。
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