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蕾
大島悠久と出会ったのは入社5年目の春だった。
当時所属していた部署では、新入社員歓迎会を兼ね花見を行っていた。
私は新入社員の次に若手で、花見の日は新入社員を引き連れ場所取りに行き、飲み会の支度をすることが仕事だった。
開催日当日、終業より早めに会社を退社し、花見会場へ行く。
まだ人はまばらで良さそうな場所をキープする。
その後、宴会の準備をしている間に、あっという間に四方の敷地は他の花見客で埋まった。
先輩社員が到着し、花見が始まる。宴が進むにつれ、ビール瓶もワインボトルもどんどん空になっていた。
そんな時、たちの悪い先輩社員が隣で花見をしているグループの男性に絡みだした。
なにを切っ掛けで絡みだしたのかはわからなかったが、似たような業界関係者で話が弾んだようだった。
絡み酒で迷惑をかけてはいけないと声を掛けようとした時、先輩はあろうことか男性のスーツに赤ワインを零した。
「すみません。」とその男性にポケットのハンカチを差し出す。
男性は立ち上がりこっちを見た。
180cm位はありそうな長身で、細身のスーツをオシャレに着こなしている。目鼻立ちの整った、端正な顔立ちの男性。
無意識に熟視したくなる。そんな風貌だった。
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