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「うちの先輩が、本当に申し訳ないです。」 「大丈夫です。」とハンカチを受け取ると、彼は赤ワインがついた部分に当てた。 「スーツのクリーニング代請求して下さい。それかお預かりして、クリーニングに出してお返しします。」 赤ワインを零した本人は「ごめん、ごめん。」と千鳥足で謝っている。 「本当に大丈夫ですよ。」 (ワインを零して、弁償しない訳にはいかないだろう。) 「染みになると困ります。遅くまで営業しているクリーニング店があるので、今晩中にだしておきましょうか?」 「そしたら、お言葉に甘えようかな。」 彼はスーツを脱いで、それを私に手渡した。 「連絡先教えてもらえますか?」 携帯をポケットから取り出し、連絡先を交換する。 「お名前は…」 「大島(おおしま) 悠久(はるひさ)です。」 「佐倉(さくら) 佳乃(よしの)です。 戻ってきたら連絡しますね。」 「よろしくお願いします。」 私は携帯をポケットにしまい、預かったスーツを抱え、会社の花見会場へ戻った。 花見を終え、先輩社員が2次会に行くのを尻目にクリーニング店へ急ぐ。 営業時間内にクリーニングに出し、帰宅しシャワーを浴びる。 ベッドに入り、ウトウトしながら今日の出来事を回想する。 (大島さん、カッコよかったな。声も素敵だった。) なんて、大島のことを思い出しながら眠りについた。
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