開花

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開花

花見から1週間が過ぎ、スーツがクリーニングから戻ってきた。 大島に連絡し、就業後、彼の職場の最寄駅である中目黒に届ける約束をした。 本来なら先輩が来るべきだが、残業で仕方なく代わりに届けることになった。 大島にまた会えることは嬉しかった。 中目黒駅に降り、改札を出ると、直ぐに大島が見つかった。 彼のスタイルの良さは遠目からでも際立ち、目立つ。 大島を目指し歩くと、私に気づき手を振る。気付いてくれたことが嬉しくて小走りになる。 「こんばんは。」 「中目黒まで、ありがとうございます。」 「いえ、大変ご迷惑おかけして。スーツお返しします。染みは綺麗に落ちたみたいです。代金は汚した本人からきっちり貰ってますので。」 そう言ってスーツの入った大きな紙袋を大島に渡す。 大島は袋を受け取ると「たしかに。」と袋の中を覗きこんで言った。 少し間があり、気まずい空気が流れる。 「中目黒って始めてきました。少し散歩でもしてみようかな。ではまた。」 大島は魅力的な男性だ。私なんかは相手にならない。潔くこの場は分かれたほうが賢明だ。と思った。 「桜祭りとか来たことないですか?目黒川沿いの。今なんか満開じゃないかな。」 「折角だし行ってみようかな。こっちの方向ですかね。」 駅の正面を指さす。 「まっすぐ行けば目黒川に突き当たりますが。案内しますよ。」 胸がドキッと音を鳴らし、まさかな提案に心が躍る。 「ありがとうございます。」 一度だけ、しかも極短時間だけ、会った大島に惹かれている。 そんな浮ついた心を見透かされないよう、必死に平常を装う。
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