からっぽ人間 1

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高校受験は大失敗だった。 母の期待に応えるべく、優秀な姉が通っていた偏差値60前後の憧れの高校を第1志望に選んだ。 内申点も申し分なく、当日の点数がボーダーラインの点を少しでも超えていたら受かると言われていたのに。 合格発表の日、私の受験番号はどこにも見当たらなかった。 原因は自分でもはっきり分かっていた。もちろん、当日のテストと面接の点数だ。 上がり症が華麗に発揮され、筆記試験では問題文を読んでも読んでも頭に入ってこず、面接では対策不足でまともに答えられなかったのだ。面接官のネクタイがキティちゃんだったのが衝撃で念の為考えていた答えが全て吹っ飛んだというのも言い訳にしておく。 挫折を経験してこなかった私は、とにかく泣いた。泣いても結果は変わらないけれど。 自分の力が発揮できなかったことが悔しい。過信しすぎていた自分が憎い。 母の期待に応えられなかった。嫌われたくない。 そんな行き場のない感情が涙となって溢れ出た。 第1志望の高校に行きたかった理由は、母の期待に応えることと、もう1つあった。 それは、当時付き合っていた彼氏のタロウ(仮名)と小学校1年生から幼なじみのハルちゃん(仮名)も同じ高校を志望していたからだ。 一緒に通おうね、なんてありもしない未来に思いを馳せあっていた。 結果が発表されてすぐに2人からメッセージがスマホに届いた。 「「受かったよ!!どうだった??」」 私は2人にどんな顔をしてその残念な結果を伝えればいいのかわからなかった。 一緒に憧れの高校に通えないことよりも、失敗してしまった自分を他人に見せることが恥ずかしかった。 「落ちちゃった。」 そう伝えたあとの2人の反応を覚えていない。 それくらい、記憶から消し去りたかった。 不幸中の幸いで、生まれ育った愛知県は公立高校を2つ受験できるため、滑り止めと呼ばれるもう1つの高校に入ることが出来た。 私の中のその高校の印象は、"少し勉強ができるチャラい人達が通うところ"だった。 つまり、今まで全く関わってこなかった人種と3年間同じ空間で生活しなければならない。 悲しみが消えないまま、新しい環境への不安を抱えながらあっという間に高校の入学式がきてしまった。
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