からっぽ人間 1

1/2
前へ
/2ページ
次へ

からっぽ人間 1

24歳、社会人3年目、OL。 Mr.Childrenの「未来」という曲にこういう歌詞がある。 "生きてる理由なんてない だけど死にたくもない こうして今日をやり過ごしてる" 私は見事にこの歌詞を体現している。 いつからだろう、毎日をやり過ごすだけになったのは。 産声をあげた日から今までを走馬灯のように振り返ってみる。 「からっぽ人間」の自分語りに少々お付き合いいただきたい。 先生に気に入られることは得意だった。 勉強ができる部類で、人懐っこい性格。人間関係で困ったこともない。 いわゆる、ザ・優等生タイプ。 挫折を知らず、人生イージーモードじゃん!!なんて正直思っていた。 しかし、勉強はできても勉強に取り組むことは嫌いだった。ただ、絵を描くことには夢中になれた。はっきり言って絵は本当に下手くそだったのだが、夢だけは一丁前に「漫画家になる」などと掲げていた。 なんでも否定するタイプの母親には、この夢について「食っていけるわけがない」、「漫画家は頭が良くないとできないから勉強をしろ」などと頭ごなしに夢を否定された。そして、母親の言うことには絶対に逆らえなかった。それは、母親が威圧的だったとかではなく、私が母親のことをとても好きだったからだと思う。母親は子ども思いであるが、その本心を態度に出せないタイプでもあるのだ。母親をがっかりさせたくない、怒らせたくないという気持ちが夢を追いかけたい気持ちとせめぎ合い、結果優等生を生かした安定ルートを目指した。 今思えば、コツコツと漫画を練習して態度で示していれば、母親の意見も変わったかもしれない。たいした努力もしてないくせに、口だけは達者で、なぜか大きくなったら自然と漫画を描いているだろうという自信さえあった。不思議なものである。 そして、ついに挫折を経験する。 優等生ルートを辿るはずだった、高校受験である。 ここから夢と希望で満たされていた私の心は少しずつ少しずつ溢れていき、からっぽになっていくのであった……。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加