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その後の話
わたし、軽井沢薫はこの世界に戻ってきた。
目を開けると、見慣れない白い天井。それに懐かしく思える電子音。
病院だ!?
崖下に落ちた車から、わたし達は救助され、夏休み中、昏睡状態のままベッドに寝かされていたそうだ。
あの異世界での10数年は、現実では1ヶ月少しの出来事だったようだ。
そして、あちらの世界の死が、現実に戻る方法だったようだ。しかし、あちらの世界で殺された松本先輩と塩尻さんは、昏睡状態から回復することなく、数週間前に亡くなったそうだ。
生き残ったのは、わたしと大妻梓さんのみ。
でも、彼女は搬送の都合で、同じ病院に運ばれなかった。
結局、入院中もリハビリ中も、あの異世界のことは思い出していた。
それにわたしの持ち物の中に、勇者様からもらった天使の紋章があったからだ。
愛した人との誓いの紋章が――。
そして、退院し学校に復帰すると、大妻さんも学校にいることを知った。
謝罪もしたい。それよりも、あの世界のことを覚えているか……共通の友達がほしかった。
でも、何度もわたしは会おうとしていたのに、彼女は避けるように行動している。
それが今日、ようやく彼女を捕まえる事ができた。
あの異世界のことを謝りたく……そう思っていた。
あの紋章を何故?
大妻がショートヘアをかき上げたときに、耳元で光ったものに目を奪われてしまった。
わたしの愛した人は、『愛の証し』と渡してくれたものを……
「何故……貴女が――」
〈了〉
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