カオリの話

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カオリの話

 わたし、軽井沢(かるいざわ)(かおる)は、彼女、大妻(おおつま)(あずさ)に謝りたかった。  あの世界のことは今では絵空事でしかないが、体験したことには変わらなかった。  そして、わたしは知っていた。  彼女が勇者様に好意を抱いていたことを――  それをわたしは奪ってしまった。  もうあの世界に行く方法は解らないけれど、あの世界での出来事を謝りたかった。  3人になったとはいえ、わたし達のパーティーは()()()()()()()()()をかけて、魔王の元にたどり着いた。  そして、魔王と戦い勝利した。  最初の話では、『魔王を倒せば帰れる』はずであった……が、それは裏切られた。  何も起こらず、帰る手段は何もなかった。  結局は、わたしとアズサは異世界で生活することとなった。  何年も何年も、その世界の住人として生活していた。  勇者様は……魔王を倒した功績で、どこかの王女様との結婚が決まったそう――  だけど、わたしを選んでくれた。  今、わたしが首に付けている紋章は愛情の証し――  嬉しかったのは確か……しかし、アズサのことが気になった。  わたしのことを思ってか、気が付けば、彼女はどこかに消えてしまった。  その後、子供も産まれたのだけれど、勇者様はその名声からか家を空けることが多くなった。それは「どこかで魔物が暴れている」などの討伐依頼だ。 「少し落ちついたら?」  そうわたしはよく勇者様に声をかけたが、返事はいつも、 「困っている人がいるから――」  そう言って、わたしと赤ちゃんを置いて、何ヶ月も家を留守にしていた。  そんなある冬のこと。  わたしは風邪をこじらせて寝込んでしまった。  現代みたいに風邪薬なんてない。治療魔法なんて病気には気休め――  こうしてわたしはあの世界で死んだ。  後悔があるとすれば、もう一度、勇者様に会いたかったこと。  そして、アズサに謝りたかった。  勇者()を取ってしまったことに――
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