Ⅵ.花見ヶ崎自然公園

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Ⅵ.花見ヶ崎自然公園

 車を降りると外は少し肌寒く感じられたが、草木の香る爽やかないい空気を感じた。砂利道を歩いて最も景色の開けた場所に行くと、そこに掲げられた看板には、やはり『花見ヶ崎自然公園展望場』と書いてあった。 「展望場なのは分かったけど……公園本体はどこなんだろう」 「そうだな。お! あっちに地図っぽいのあるから見に行こう!」  私の手を掴むと、タツキは掲示板のように立てられた現在地図の方へと引っ張っていった。そして二人でポップな絵で描かれた地図を見上げる。  ……すぐに分かった。  まず地図の上部にでかでかと『花見ヶ崎自然公園』と書かれているのだ。  そして現在地を示す『展望場』のところに星印が描かれ、さらにもっと下には『花見ヶ崎自然山道入口』や『花見ヶ崎の滝』なども描かれていた。  要するにだ。 「花見ヶ崎自然公園って……めちゃめちゃでかい!?」 「そうみたいね。ここら一体が『花見ヶ崎自然公園』らしいよ」 「あれー? なんか遊具とかベンチとかないのかな?」 「ないねー」  私が伏し目がちにタツキの顔を覗き込むと、何故かそのままキスされた。  突然のことにびっくりしてのけ反る。 「ちょ! なにしてんの」 「超広い公園だから、こんなことも出来る!」  そう言いながら、タツキは悪ガキスマイルを見せた。  私は誰かいないかと周囲を見回したが、幸いにも展望場のところで老夫婦らしき人が景色を眺めているだけで、他に人はいなかった。 「リっちゃん、あの御夫婦に花見できる場所訊いてみよ!」 「あ、待ってよ」  駆け出したタツキの背中を追いながら、私はちょっと自分が幸せを感じていることに気が付いた。
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