第1章 眉目秀麗な第三王子とお仕事一筋薬師

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第1章 眉目秀麗な第三王子とお仕事一筋薬師

第1話 目覚めた瞬間、試される 朝の日差しと鳥の鳴き声が、眠りの世界から引き剥がすように目と耳を刺激する。 わたしはまぶたを開けずとも、1日の始まりを感じた。 けれど、甘い眠気はわたしをもう一度眠りに誘おうとして、頑なに瞼を開かせてくれない。 んん、と口の間から声を漏らし、わたしはなんとかぼんやりとした視界を映すことができた。 季節は春から夏の間。 少しずつ暖かさが暑さに変わる頃だからか、なんだか今日は一段と朝日が眩しい。 うっかりカーテンを閉め忘れたのかもしれない。 遠くの時計の針を見るにまだ起きる時間ではないようだけれど、もうひと眠りはできなさそうだ。 ぼやけた視界のままもぞもぞと体を動かして起き上がろうとすると、 「おはよう」 声が、聞こえた。 動物と人が混ざり合ったような、多様な種族が暮らすこの世界。 やれ竜が一番偉いだの、虎が最も優秀だの、純粋な人間(ヒューマン)が世界を統べるべきだのと、種族間で様々な争いの歴史を紡いできた。 ここはミリステア魔王国。 そんな薄暗い歴史を辿った結果、種族を超えて手を取り合い生まれた平和の国。 王都ステラには、王族が暮らす巨大な魔王城がある。 その広大な敷地の端っこにある使用人寮の一室に、わたしの部屋はあった。 この部屋はわたし以外に誰もいないはずだ。 こんな朝に、どうして声が…。 あっ、幻聴かな。 昨日は夜ふかししてしまったし、起きたこと自体も夢なのかも。 「メイシィ、朝だよ、起きて私に綺麗な赤い瞳を見せて」 ……幻聴にしては、やたらはっきりしているなあ。 ……え、夢じゃない? 「メイシィ、メイシィ」 「ん………?」 朝一番の戦いに勝ち、わたしはなんとかまぶたを開き直す。 その視界には、それはそれは美しい金髪碧眼の男性がいた。 そう、それはまるで、『王子様』のような―――― 「…………クリード殿下?」 「ああ、そうだよ。メイシィ。おはよう」 ベッドに肘をついてこちらをまっすぐ見つめるのは、それはそれは美しい金髪碧眼の王子様。 ……比喩ではない。 いつもの真っ白な服を着て、整えられた髪が朝日に照らされて光り輝く細身の男性。 片や、たくさん寝返りをしてくしゃくしゃになったシーツで寝そべるわたし。 白い髪は寝ぐせでやりたい放題のボサボサ、寝起きのだらしない顔を見せびらかしている。 その状況は、わたしの目を完全に覚ますには十分過ぎた。 「……どうしてここにいるんでしょう、クリード殿下……」 「どうしてって……君に朝の挨拶をしたかったからに決まっているじゃないか」 数々の女性を落としてきた笑顔を煌めかせて、彼はさも当たり前のように言った。 ここは多くの人々が懸命に生きる、平和の楽園。 わたしは今日も、とともに1日が始まった。
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