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 (そう)が、ケイタの恋人であるユカを襲おうとしている。 「きゃあああ!」  人面瘡。どこからどう見ても、人の顔にしか見えない醜悪な腫瘍。  そいつが今、ケイタの脚の脛のあたりにこびりついている。 「グイモノオオオ!」  ケイタは白目をむいている。彼の意識はすでにない。声をあげているのは、彼の脛にできた人面瘡だ。口にあたる場所は皮膚が裂け、なかから真っ赤な肉がのぞいている。そして、裂け目からは骨が変形したのだろうーー鋭利な歯がギザギザと顔をのぞかせていた。 「やめて! ケイタくん」  瘡に寄生されたケイタの右足が地面を蹴る。  同時に、ケイタの身体は上半身がうしろに倒れる。重力のままに落ちていくが、頭は地面に接地しない。左脚をささえにしたハイキックの形で、瘡はユカの首めがけて脚と一緒に飛んでいく。  ぐちゃり。人面瘡の歯がユカの首すじに食いこむ。彼女の首から鮮血が勢いよく噴出し、濃紺色の夜に舞った。人面瘡はケイタの脚をもとの位置に戻そうとする。首を喰いちぎろうとしているのだ。  なぜ、こんなことになったのだろうーー  ユカは血の気を失っていくなか、数分まえに起こったできごとを思い出していた。
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