予言者とかんざし

後編

「それでは五年二組の同窓会をはじめます。乾杯」
　桜の花びらが舞い降るなかはじまった同窓会は盛況だった。五年二組の生徒数は約三十人。二十人近く集まっているので、出席率もなかなかのものだ。
　智哉は男連中と輪をつくり、酒やつまみを口にしながら、さっきの体験をふまえた話をした。
　桜の樹の下でかんざしを拾ったこと。
　直後にキヨさんが現れて、拾ったかんざしを渡したこと。
　おそらくクニちゃんはそれを予言していたこと。

　すると、男連中は興奮気味に口を開いた。
「そういや、クニちゃんの幽霊が消えるとき、ともやって呟いてたもんな」
「小学生のときに、今日のことを予言してたんか。かっけーすぎるやろ」
「やっぱりクニちゃんは、本物の予言者やったんやな」
「阿呆やなかったら、宝くじ当てれたのに」
　盛りあがっている智哉たちに、女連中は冷ややかな目を向けた。
　明里にいたっては、呆れた顔でこう呟いた。
「阿呆はあんたらやろ。予言者って……小学生か」

　その後、同窓会は楽しく進んでいった。
　昔話に花を咲かせていると、男連中のひとりが、智哉にこんな話をした。
「そういや知ってるか？　クニちゃんのオカンな、この町に戻ってきてるんやで」
「え、そうなん？」
「去年の年末に戻ってきたんや。駅前のスーパーでパートしてるわ」
「へえ」
　智哉は缶ビールを一口飲んでから続けた。
「戻ってきてよかったな」
　なにがよかったのかわからないが、みんなも同意見らしかった。
「そうやな。戻ってきてよかったと思う」
「ほんまによかったよな」
「よかった、よかった」
　最後に明里も言った。
「うん、よかった」
　みんながそう言うのだから、きっとよかったのだろう。

　町に戻ってきた母親の住まいには、クニちゃんの仏壇があるそうだ。みんなで線香をあげにいったこともあるという。この公園の桜は縁続き桜と言われている。死んだクニちゃんも含めて、みんなとのいい縁が、これからも続いていけばなによりだと思う。

　　　　　了