14人が本棚に入れています
本棚に追加
さっき聞いた明里の話によれば、竹蔵とキヨさんの逸話は一七〇〇年代のことらしい。そして、キヨさんが失くしたかんざしを見つけたのは三百年後だ。その話を聞いたときは気づかなかったが、逸話の時代が一七〇〇年代の前半だとすれば、三百年後は二〇〇〇年代前半ということになる。
つまり、キヨさんがかんざしを見つけたのは現在だ。
今しがた現れたのはやはりキヨさんで、智哉が渡したかんざしは、彼女が失くしたものではないか。だとすれば、キヨさんは逸話どおりに、三百年後の現在にかんざしを見つけている。
また、かんざしが土に埋まっていた場所は、クニちゃんの幽霊がいたところだ。そして、クニちゃんは消える寸前に「ともや」と呟いた。
クニちゃんには未来を予言する不思議な力があった。ここで智哉がかんざしを見つけて、キヨさんに手渡すことを、予言してそう呟いたのではないだろうか。
そんなふうに考えるのは、話を飛躍させすぎかもしれない。しかし、一旦予言だと考えてしまうと、もう予言だとしか思えなかった。きっとクニちゃんは十五年以上も前に今日のことを予言をして、それを見事に的中させたのだ。
智哉は興奮に駆られて、ついひとりで呟いてしまった。
「クニちゃん、めっちゃ、かっけーやん……」
たまたま通りすがった花見客が、こわ……、という顔をして智哉を見た。
最初のコメントを投稿しよう!