後編

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 さっき聞いた明里の話によれば、松蔵とキヨさんの逸話は一七〇〇年代のことらしい。そして、キヨさんが()くしたかんざしを見つけたのは三百年後だ。その話を聞いたときは気づかなかったが、逸話の時代が一七〇〇年代の前半だとすれば、三百年後は二〇〇〇年代前半ということになる。  つまり、キヨさんがかんざしを見つけたのは現在だ。  今しがた現れたのはやはりキヨさんで、智哉が渡したかんざしは、彼女が()くしたものではないか。だとすれば、キヨさんは逸話どおりに、三百年後の現在にかんざしを見つけている。    また、かんざしが土に埋まっていた場所は、クニちゃんの幽霊がいたところだ。そして、クニちゃんは消える寸前に「ともや」と呟いた。  クニちゃんには未来を予言する不思議な力があった。ここで智哉がかんざしを見つけて、キヨさんに手渡すことを、予言してそう呟いたのではないだろうか。    そんなふうに考えるのは、話を飛躍させすぎかもしれない。しかし、一旦予言だと考えてしまうと、もう予言だとしか思えなかった。きっとクニちゃんは十五年以上も前に今日のことを予言をして、それを見事に的中させたのだ。  智哉は興奮に駆られて、ついひとりで呟いてしまった。 「クニちゃん、めっちゃ、かっけーやん……」  たまたま通りすがった花見客が、こわ……、という顔をして智哉を見た。
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