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IV
◆◆◆◆
Bar e sala da pranzo【サルバトーレ】
荘厳な音楽が店内から僅かに流れ聴こえる白い大理石のテラス席に二人は向かい合う形で座る。
アンジェリカが行きたいと望んだのは、どれもルカトーニに縁のある場所だった。
ここも彼がアイデアを練る時によく利用していた店として、当時の外観のままに残されている。
「それではこの国には最近来たばかりなのですね」
「えぇ、ルーツはここにあるのですが。この歳までヴォンで育ちました。それでも音楽をするならルーラ以上の国、レンハイム以上の街はありません」
「ルーラは今後数世紀に渡って恨まれそうです。ヴォンから千年に一度の天才を奪ってしまったわけですから」
「気をつけた方が良いですわ。ヴォンは女性でも鉄のドレスを着て戦う国ですもの」
「でしたら、ルーラの男性は手に花束を持って抵抗しましょう」
「ふふ、平和的解決が必要ですね」
「えぇ、ですがヴォンとルーラには大きな共通点がある」
「「どちらも珈琲の国であること」」
二人の声が重なったのは、ちょうど食後の珈琲とデザートが運ばれてきた時だった。
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