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桜は咲きほこって
風に舞い上がる、やわらかな花びら。
空は春らしく澄んでいて、絶好の花見日和だった。
「お花! 白! ピンク! あれはちょっと黒いピンク!」
はしゃぐ娘がほほえましい。
私にはもはや「薄いピンク」の一色に見える桜の花だが、幼い娘の豊かな感性を宿した瞳には色とりどりな世界が映っているらしい。
「ママ、この木のお花はピンクでね、遠くのお花は白いね!」
娘が指差した桜たちを見比べる。確かに、遠くにある木ほど光の加減なのか一本一本の枝が見えないからなのか、わずかに白っぽく見えた。
「ほんとだね」
「ほんとだよ! ねえ、この木とあっちの木はちがうお花なの?」
こんなに楽しんでくれるなら、早起きして家事を片付けて来た甲斐があったな。
嫌いな家事による疲れも、楽しんでいる娘を見ればあっという間に吹き飛んでいく。
「同じお花だと思うけど、なんでかなあ。近くまで行って、よく見てみよっか」
「うん!」
元気よくお返事をした娘は、私の手を掴み、ぐいぐい引っ張りながら歩きはじめた。
「奈々ちゃん、ゆっくり歩こ。ママ疲れちゃう」
晴れた休日である今日は花見に来た人たちでにぎわっている。
最近の娘は、「危ないからゆっくり歩いて」と言うと逆に私の手を振りほどいて走り出してしまうことがある。だから、走らないでほしい時には言い方を工夫するようにしていた。
娘はきょとんとしてこちらを見上げ、「いいよ」と言って速度を落としてくれた。思いやりのある良い子に育ってくれているようで、嬉しくなる。
この子の純粋な優しさが将来曲がってしまわないように、頑張らないと。
娘が離れていってしまわないように、娘の手をしっかりと握り直した。
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