集合は名鉄の駅

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集合は名鉄の駅

 海老名SAで腹ごしらえ。  結花たち四人はただ食事を取っていただけだが、なかなか目立つ集団のようで、周囲より好奇の目を向けられる。 「絵図はあるのか」  豚骨ラーメンを啜る雲英に聞かれた。隣りに座る結花も同じラーメンだが、トッピングを張り切ってしまった感が否めない。  絵図ですか、と聞きなれない単語に戸惑い、前の席のふたりに目配せした。  計画、作戦、予定など、思いつく限りの類語を挙げてくれる文馬は、黒胡麻と肉味噌のハーフ&ハーフを食している。  腹が減っては戦はできんを地で行く四人だ、フードファイターのように次々と平らげた。 「さっき聞いた係長からのお話しでは」  食べながら喋るのは行儀が悪いので、一度飲み込み水分で口内を潤すと、口元を布巾で拭いてから喋る。  21時には国嶋と比嘉が常滑(セントレア)に着く、空港(3レター)コードはNGOだが名古屋ではない。  新幹線組の志岐と梅干野は、日中既に木全との合流を果たした未華や、東海北陸厚生局の面々と先に落ち合う予定。  愛知県警も令状を持ち、包囲の準備を始めている。  後発隊の車と飛行機組は、現場へ最優先で向かう。 「結ちゃんの彼氏とご対面」  文馬は楽しそうに冷やかした。 「やめてください、仕事中です」  照れてしまうのは、先ほど電話越しにくれた、国嶋の言葉が胸を刺し抜けないからか。  食後は東名から新東名に入り、運転手交代をした結花も飛ばした。 「出たな名古屋走り」  自分のことは棚に上げる、助手席の良崎だ。  二時間も走ると念願の伊勢湾道に入り、そこから一時間もしないうち走り切り一般道に出た。  現場よりも先どこに向かっているのか、それは国嶋ともう一度会える場所だ。  数時間前まで都内にて就業していて、結花と国嶋といたあの時点では仕事を終えたら帰宅して、また普段通りの夜を過ごすつもりだった。  神奈川、静岡、そして愛知。  随分遠くまで来てしまった、全ての決着をつけるために。  結花は比嘉と連絡を取り合い、駅南口徒歩圏内の場所でレンタカーを手配してもらった。  国嶋を見たがっていた文馬をあえて運転席に残し、結花は高級セダンを後にする。 「こんな遠方まで送っていただき、本当にありがとうございました」  車外から後部座席の雲英に近寄ると窓が開いたので、結花は深く頭を下げた。 「実家()に用があったから、ついでにお前を乗せただけだ」  噴き出しそうなほど素っ気ないが、薬を心底嫌う雲英だからこそ協力してくれたのだ。元暴なんて思えない。
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