43人が本棚に入れています
本棚に追加
集合は名鉄の駅
海老名SAで腹ごしらえ。
結花たち四人はただ食事を取っていただけだが、なかなか目立つ集団のようで、周囲より好奇の目を向けられる。
「絵図はあるのか」
豚骨ラーメンを啜る雲英に聞かれた。隣りに座る結花も同じラーメンだが、トッピングを張り切ってしまった感が否めない。
絵図ですか、と聞きなれない単語に戸惑い、前の席のふたりに目配せした。
計画、作戦、予定など、思いつく限りの類語を挙げてくれる文馬は、黒胡麻と肉味噌のハーフ&ハーフを食している。
腹が減っては戦はできんを地で行く四人だ、フードファイターのように次々と平らげた。
「さっき聞いた係長からのお話しでは」
食べながら喋るのは行儀が悪いので、一度飲み込み水分で口内を潤すと、口元を布巾で拭いてから喋る。
21時には国嶋と比嘉が常滑に着く、空港コードはNGOだが名古屋ではない。
新幹線組の志岐と梅干野は、日中既に木全との合流を果たした未華や、東海北陸厚生局の面々と先に落ち合う予定。
愛知県警も令状を持ち、包囲の準備を始めている。
後発隊の車と飛行機組は、現場へ最優先で向かう。
「結ちゃんの彼氏とご対面」
文馬は楽しそうに冷やかした。
「やめてください、仕事中です」
照れてしまうのは、先ほど電話越しにくれた、国嶋の言葉が胸を刺し抜けないからか。
食後は東名から新東名に入り、運転手交代をした結花も飛ばした。
「出たな名古屋走り」
自分のことは棚に上げる、助手席の良崎だ。
二時間も走ると念願の伊勢湾道に入り、そこから一時間もしないうち走り切り一般道に出た。
現場よりも先どこに向かっているのか、それは国嶋ともう一度会える場所だ。
数時間前まで都内にて就業していて、結花と国嶋といたあの時点では仕事を終えたら帰宅して、また普段通りの夜を過ごすつもりだった。
神奈川、静岡、そして愛知。
随分遠くまで来てしまった、全ての決着をつけるために。
結花は比嘉と連絡を取り合い、駅南口徒歩圏内の場所でレンタカーを手配してもらった。
国嶋を見たがっていた文馬をあえて運転席に残し、結花は高級セダンを後にする。
「こんな遠方まで送っていただき、本当にありがとうございました」
車外から後部座席の雲英に近寄ると窓が開いたので、結花は深く頭を下げた。
「実家に用があったから、ついでにお前を乗せただけだ」
噴き出しそうなほど素っ気ないが、薬を心底嫌う雲英だからこそ協力してくれたのだ。元暴なんて思えない。
最初のコメントを投稿しよう!