デストルドー

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 どうしても釜萢に、真相を確かめたい国嶋だ。  外務省に入電したが、既に釜萢は異動となっていて、今日にも日本を発つとの返答をもらう。  辿り着いた品川駅前には人だかりができていて、中央に拡声器を持った若者数人が雑踏に向け訴えかけている。  周辺まで社用車で、国嶋に送ってもらったところだ。  結花の提案で、国嶋は羽田に向かっている。 「積極的な安楽死を」 「死ぬ権利を行使しましょう」 「ご賛同いただいた方は、署名をお願いします」  掲げるプラカードには救済会と書かれていて、ここは通らない方が良いかもしれないと、結花の直感がそう訴えた。  一番近い入口から駅に入れないため、周辺の別入口に向かうことになる。  ウロウロしていると、クラクションを鳴らされた。  また救済会の妨害か、もうGPSはないのだが。  振り向くと、結ちゃん、と名を呼ぶのは文馬。  助手席の窓を開け、こちらに手を振っている。  運転席に良崎、後部座席に雲英がいる高級セダンに歩み寄った。 「乗せてください」  気づいた時にはお願いしている、それも無意識に。 「うちはタクシーじゃない」  ボソッと、聞こえないくらいの小さな声で雲英は抗議したが、時既に遅し。  結花は隣りに乗り込んだ。  (ドア)(ロック)は良崎が解除していた。 「声掛けろって言ったの、理人だろう」  文馬が笑う。で、と良崎は(ミラー)越しに結花を見た。 「切羽詰まっているみたいだな」  ひと息置くと、掻い摘み結花は事情を説明する。  雲英たちも薬物を嫌う同志なので、すぐに理解を示してくれた。  空港の国嶋は、出発(ゲート)で釜萢の姿を見つけ声をかけた。  気づいた釜萢は振り返り、そして不機嫌の表情を見せる。  庁内では龍前と本当の豊増に対し、逮捕状を請求できる運びとになった。  未華を先発隊に選んだ件と併せ、志岐は木全に報告する。 「さてこっちはどう動かすか」  志岐は顎に手を当て呟いた。  一方の結花を乗せた車は東名に入ると、右レーンをすっ飛ばす。 「カチコミとは久しぶりだなぁ」  血の気の多い良崎なので、逸る気持ちを運転に乗せていた。  同じ頃。飛行機の発着を眺める国嶋は、大きな窓の外を見詰める。 「豊増に頼まれたそうだ」    先ほど志岐から連絡が入り、羽田にいる旨伝えたところ、比嘉を向かわせるので行動を共にするよう指示を受けた。  比嘉と合流したら、飛行機を待つことになる。 「狙いは宇佐美か」  比嘉の問いに、国嶋は首を傾げた。元カノはそんな薄情な人間か。
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