第三章 薬と毒

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私の話を訊き終えた彼は「そうか……。僕のせいでエリさんに余計な気を遣わせてしまったんだね」と呟いた。 「気を遣わせたとかそんなんじゃない。ただ心配しただけ。どうして昨日、私に連絡しなかったのよ」 「……」 「そんなに私は頼りない?」 「違うよ、そんなんじゃない」 「じゃあなんで? 妹さん、実家暮らしで、それも此処から結構遠いっていっていた。車で一時間って」 「……」 「遠くの妹さんを呼び出すくらいなら近くの私を頼った方が──」 「……邪魔を、したくなかった、から」 「え」 「エリさん……昨日は飲み会で……きっと楽しい時間を過ごしているだろうから」 「……」 「そんなエリさんの邪魔をしたくなかった」 「~~~っ、馬鹿!」 「え」 「馬鹿馬鹿馬鹿!!」 「え……僕、馬鹿?」 「違う! 私が……私が……」 (大馬鹿者だ!!) 今までの付き合いから考えれば彼がそう思うのは当然だ。彼はそういう人なのだ。 彼をそんな風にさせたのは私だ。私の奔放な我がままで今まで散々彼を振り回していた。 いや──私は甘えていたのだ。寛大な彼の性根に付け込んで、居心地のいい場所を確保しつつ好き勝手して彼を手玉に取った気でいた。 だけどいざ彼から必要としてもらえなかったらこの(ざま)だ。 もし彼から『もう付き合い切れない。今までみたいな関係は止めよう』とか『他に好きな人が出来たからもう会わない』なんて言われるのを想像するとおかしくなりそうで悲しかった。
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