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「ミステリー作家が書く人間、明智光秀かぁ……。ワクワクしちゃう!」
「エリさん、本は貸してあげるからとりあえず今はご飯を食べよう」
「はぁい」
出来上がった晩ご飯を前に本を読み始めていた私は五十嵐さんに対してお母さんが子どもにするような注意を受けた。
「ほら、エリさんの好きなささ身肉の甘辛焼き」
「わぁ、美味しそう。いただきます」
「はい、召し上がれ」
料理好きの五十嵐さんが作ってくれる料理にすっかり懐いてしまっている私。こんな時、私のためにずっとご飯を作ってくれればいいのになぁと思ってしまうのだった。
美味しいご飯を頂き、ついでにお風呂にも入らせてもらい心身共に満足しきっていた。
「祐樹さん、お風呂ありがとう」
「うん」
リビングに入ると彼はパソコンを触っていた。
「何しているの?」
「面白そうな小説があったから注文」
「本屋さんで買えばいいのに」
「そうなんだけど探すの、大変じゃない」
「そう? その探す作業も楽しいと思うけれど」
「エリさんはね。でも僕はそういう時間があったら本を読む時間に充てたいから」
「らしいね」
彼のそんな性格も承知の上だ。何から何まで価値観がピッタリ合っている訳じゃない。だけど合わないところもあっていいと思うし、私にはない考えをする彼のことを嫌だとは思わなかった。
「よし、注文完了」
「終わったの? ──じゃあ」
徐に彼を後ろから抱きしめた。
「ん? するの?」
「したい。祐樹さんは? そういう気分じゃない?」
「お風呂、入って来てもいい?」
「いいよ」
私からの誘いを余程のことがない限り受け入れてくれるところも好きだった。
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