第一章 肉と魚

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慣れ親しんだ彼との行為を終え、微睡んでいるとそういえばと思い出した。 「ねぇ、祐樹さん。今度の飲み会、参加する?」 私に背中を向けて事後処理をしている彼に問いかけた。 「飲み会? 会社主催のやつ?」 「そう。今日一斉メールで届いたんだけど見ていなかった?」 「今日はパソコン触っていなかったから。明日確認しないと」 「ん。で? 参加する?」 「僕はしない」 「そっか」 それはいつも通りの返答だった。前々から彼は大勢の人が集まる会が苦手だといっていた。しかも人見知りらしく、必要以上に知らない人とは関わりあいたくないという性質(たち)らしい。 (でも合コンには出るんだよね) 上記の事を知った時、それとなく其処を指摘すると『あの時だけだよ。拓也に誘われたから仕方がなく』と答えた。 普段は仲間内に誘われてもああいう席には参加しないのだといった。そんなたまたま参加した合コンで彼と知り合えた私は幸運なのか、とか思ったりもした。 そういう小さな偶然も私が彼を他の男とは違った位置で捉えているひとつだった。 「エリさんは? 参加するの?」 「うん。他の部署の人と知り合えるいい機会だし」 「そうだよね、エリさんはそういう人だよね」 「……」 (なんかその言い方、ちょっと引っかかった……かも) 彼は私が他にも付き合っている(ひと)がいることを知っている。
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