第二章 赤と白

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壁際に佇んで会場内を観察していると声を掛けられた。 「やぁ、島田さん」 「中村さん、お久しぶりです」 「だね。何、ここ最近全然誘ってくれないね」 「だって中村さん、彼女出来たじゃないですか」 「あれ、島田さんにまで情報回ってる?」 「彼女、自慢げに語っていましたよ。いいですね、愛されていますね」 「え……そうかな? ははっ、参ったなぁ」 「……」 半年ほど前、いいなと思って付き合って二度ほど寝た男。だけど噂で本命の彼女がいることを知り遠ざかっていた。 (別に二股かけられていたっていいのよ) 自分も同じようなことをしている手前、そんなことでは怒らない。ただ、嘘をつかれるのは許せなかった。 『彼女? いないいない! 君一筋なんだからさ』なんて言葉を信じて付き合ってしまった私が、私自身を愚かだと思ってしまう羽目になることに怒れるのだ。 最初に正直にいってくれれば色んな選択肢が出来た。 彼女がいる男なら簡単に寝たりしなかった。万が一、相手の女に知れた時に揉めるのは御免だから。そもそも本気じゃない男のことで喧嘩するのが見当違いだろう。 (要は私が主導権を握っていたいのよね) 男を掌の上で転がせる感覚がいいと思ってしまう。 そういうところを含めて、付き合う男はきちんと見極めないといけないと改めて思うのだ。
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