112人が本棚に入れています
本棚に追加
壁際に佇んで会場内を観察していると声を掛けられた。
「やぁ、島田さん」
「中村さん、お久しぶりです」
「だね。何、ここ最近全然誘ってくれないね」
「だって中村さん、彼女出来たじゃないですか」
「あれ、島田さんにまで情報回ってる?」
「彼女、自慢げに語っていましたよ。いいですね、愛されていますね」
「え……そうかな? ははっ、参ったなぁ」
「……」
半年ほど前、いいなと思って付き合って二度ほど寝た男。だけど噂で本命の彼女がいることを知り遠ざかっていた。
(別に二股かけられていたっていいのよ)
自分も同じようなことをしている手前、そんなことでは怒らない。ただ、嘘をつかれるのは許せなかった。
『彼女? いないいない! 君一筋なんだからさ』なんて言葉を信じて付き合ってしまった私が、私自身を愚かだと思ってしまう羽目になることに怒れるのだ。
最初に正直にいってくれれば色んな選択肢が出来た。
彼女がいる男なら簡単に寝たりしなかった。万が一、相手の女に知れた時に揉めるのは御免だから。そもそも本気じゃない男のことで喧嘩するのが見当違いだろう。
(要は私が主導権を握っていたいのよね)
男を掌の上で転がせる感覚がいいと思ってしまう。
そういうところを含めて、付き合う男はきちんと見極めないといけないと改めて思うのだ。
最初のコメントを投稿しよう!