第二章 赤と白

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しかし次々に繰り広げられる係長との会話が思いのほか面白可笑しくて、気が付けば心の中に構築されていた係長に対する防波堤はあっさりと決壊していた。 いつの間にか飲食用のテーブルの上には追加された様々な肉料理が盛られていた。それと共に赤と白のボトルワインも置かれていた。 「島田は赤ワインばかりだな。白は飲まないのか」 「基本飲みません。肉には赤でしょう」 「そうかぁ? 俺は断然白派だ」 「え、意外」 「肉のしつこさを白ワインでさっぱりさせる。これだよ」 「うーん……」 (そこは好みが合わないな) でも係長のいっていることも腑に落ちるので敢えて反論はしなかった。 騒がしかった会場内が徐々に静けさを増して来た。つい数十分前『そろそろお開きの時間です』という幹事の声が聞こえていたのだけれど…… 「係長」 「……ん」 「そろそろ会場、閉めるみたいですよ」 「……あっそ」 「あっそって、私たちも帰りませんか」 「おぉー帰ろう、帰ろう」 「……」 (ひょっとしてかなり酔っている?) 散々飲み食いしたテーブルの上には空になったワインボトルが5本。そのうち4本は私が空けたのだけれど。 (たった1本でほぼ泥酔状態なの?!) 私は自分でいうのもなんだけれど酒豪だ。しかも飲んでもほぼ泥酔状態になるまでは酔わない。 でもだからといってボトル1本でここまで酔っぱらう男も珍しいと思った。 「係長、ほら、帰りますよ」 「ん……帰る、帰る……」 「……」 (はぁ……どうしたものかな) 完全に酔っぱらっている大人の男性を抱えてられるほど私は力強くはなかった。
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