第二章 赤と白

6/12
前へ
/41ページ
次へ
やむを得なかった。これは非常事態なのだから。 (って、誰に向かって言い訳しているんだ) 自問自答しながらはぁぁと息を吐いた。 「……」 私の視線の先にはベッドに仰向けになって寝ている内野宮係長がいた。 数時間前、千鳥足の係長は会場を出て数歩行ったところで撃沈した。とりあえずホテルの人を呼び数人がかりでタクシーに乗せたまではいいけれど、係長の自宅住所を知らなかったので仕方がなく私の家へと向かったという経緯。 (早まったかな) まさか係長がここまでお酒に弱いとは知らなかった。見かけだけでみれば大層な酒飲み風貌なのだけれど。 (さて、と……これからどうしようかな) 酔っている人間をどうこうしようと思うほど男には飢えていないけれど、それでも眠っている係長を前にすると自然と喉が鳴った。 (係長はどんなセックスをするのかしら) そんな興味がムクムクと湧き上がって来て、だんだん体も熱っぽくなって来た。 (酔っている今なら……イケる?) 酔いに任せて致してしまったという大義名分があれば、万が一気まずくなった時にいくらでも言い訳が出来るかもしれない。 よくあることよね──そんな風に自分自身にいい訊かせながらそっとベッドに近づき、そして係長の上に跨った。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加