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──い
「……ん」
──い、お──ろ
「……んん」
「おい、起きろ!」
「!」
体が揺れた衝撃で瞬く間に意識が浮上した。
「……あ、係長。起きたんですか」
「起きたんですかって……おまえ」
明らかに動揺している係長を尻目に部屋の中が明るくなっていることで朝が来たのだと分かった。体育座りから立ち上がると少し足が痛んだ。
(あー……あのまま寝ちゃったのか)
その場で軽くストレッチをしていると係長がもの凄く表情を強張らせながら話し掛けて来た。
「なぁ、此処って……ひょっとして」
「私の家です」
「なっ!」
「係長、どこまで覚えていますか」
「どこまでって……おまえと差し飲みしていて……」
「それから?」
「それから……会場から出て……歩いた?」
「それで?」
「それで……気が付いたら此処にいた」
「ははは、完全に酔っぱらっていたんですね」
その見事までの酔いっぷりに呆れるどころか寧ろ感心した。
その流れで昨夜のことをかいつまんで係長に話した。するととても申し訳なさそうに私の前で手を合わせた。
「すまなかった! 迷惑かけて!」
「迷惑だなんて」
「部下の寝床を占領する上司がどこにいる!」
「……」
私の目の前にいますが──とは敢えていわないけれど。
「本当に悪かったな」
「それはいいです。それより係長、二日酔い大丈夫ですか」
「あぁ。俺、二日酔いってなったことがない」
「……へぇ」
(お酒に弱いくせに二日酔いがないって)
あぁ、二日酔いになる前に本能的にお酒が遮断されるのだろうか。だからお酒が弱いに繋がるのかもしれない。──なんて考えていると係長の私を見る目が少し変わった気がした。
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