第三章 薬と毒

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ベッドで眠っている彼の寝顔を見ながらそういえばと思い出す。 彼の家に泊まって行くことはあったけれど何故かいつも彼は私よりも遅く眠っていた。そして朝も私よりも早く起きていた。だから今更ながら彼の寝顔を初めて見た。 (寝顔……可愛い) 三十近いというのにその年齢にそぐわないあどけない寝顔にキュンキュンして仕方がない。 (なんか……本当に変だ、私) 彼に対して今まで感じたことのない気持ちがこの数時間で後から後から湧いて来て仕方がない。 (これはもう、そういうこと、なのだろうか──?) 「……っ、ん」 彼が身動ぎして徐に瞼を持ち上げた。そして瞳が傍にいる私に向いた瞬間、大きく見開かれた。 「……え……エリ、さん?」 「うん。私」 「な、なんで」 驚いた様子を見せながら彼は上体を起こそうとした。それを慌てて制した。 「起きちゃダメ。熱、まだあるんだから」 「……」 どうして私が此処にいるのか解らないといった驚いた顔をしている彼にここまでに至った経緯を話した。
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